「……もう、歩きたくない」


男に出会ってから丸一日を過ぎた。
ジトリとして呟いても、目の前の相手は沈黙を続けているのが少女は恨めしい。

午後になると肌寒いのもなくなり、逆に、風は強めだが季節外れなくらい暑くなってきた。
郊外の芝生の上で座って休憩をとった数時間前、 何かを理由にしてどこからか通報でもされたのか、パトカーの姿が目につくようになったので、今は再び街中に戻って巡回していた。

これまで死因を全て捌ききっていた二人の視線や行動はもはや特殊な訓練を受けたかのように、街のなかでも、平静さを失わず、目立たず、陰に潜んでいると言ってもいいだろう。 事故現場からは速やかに人混みに紛れ、心配する人からは未知の言語で煙に巻くルーチンをこなし、壁のヒビや頭上の異変などに目ざとく反応した。

しかし、の体力は、ここで限界だった。
昨日と合わせたって普通の大人でも音を上げる障害と距離を越え、朝には叩き起こされている。
気合いですら無くなってきて、まだ歩くのかと石畳に重い足を引きずり、いつの間にか行先を先導するのは男の方になっていた。 体力が尽きると子供というのは次第に眠くなるもので、瞼は重くなるわ、頭はぼんやりしてくるわ、体は勝手に眠る準備を整えられるわ、 その癖、手を引かれるまま、足は動いてるので完全には眠れず、どっちも上手くいかず、すると自然と鼻がツンとしてくる。案を出してもアレもダメ、コレもダメ、もう、に策は出ない。親切心すら拒絶されてしまったようなもので、有体に言えば、心が拗ねていた。 そうすると、口から出るのは不平や不満ばかりになってしまう。

「……足の長さが違うでしょ、スタンドの力だって私のだし、
 疲れで言えば3倍くらい私のほうが疲れてると思うんだけど」

「さっきから何が言いたい」

男が不承不承でやっと振り向くと、すでには憮然として男に向かって不満げに両手を斜め上に突き出していた。 何を意味しているのか考えていた男だったが、爪先立ちの要求を加えると察して顔を引きつらせて横を向く。 それがまるで酷く怖い事から顔を反らすようだった。

「……甘ったれてるんじゃあないだろうな」

「負担の平等を要求してるんだよ」

男が一歩で済むところを少女は二歩必要だ。男が100足らず歩いたところで少女は200歩、歩かねばならない。 それに、この自動防御のスタンドの発動に体力がいるのかどうかは微妙だが、は能力を提供し続けている。だから3倍。そう少女は自負しているが、男は粘った。

「目立たないようにするという約束はどうした」

「つかれた。このままだと泣く」

「脅しか?」

「知らない。つかれた」

「……手を繋いだままどうやって持ち上げる?
 片手で持つにしても、もう片手も繋いでるなんて変だろう」

「布は一度解けばいいでしょ。触れてればいいんだし」

軽い声で言うと、浅慮に心外という顔をした。
しかし、譲る気はなく「貴方が寝たい時、私、頷いた」とが改めて言うと、神経質そうな眉の間が狭くなった。 少女は首を横に振る。男の価値観は既にご存知だ。

「別に“親切をしろ”って強制しているわけじゃないよ。
 気をきかせてよ、って、暗に期待してるんでもなくてね。報酬を決めたの。
 貴方の要求に頷いて、貴方が言った、一晩傍にいた私への報酬の内容。
 抱き上げて運んで」

お金じゃ寝れない。そう言うと、ぐっと男は言葉を呑んだ。
の顔が久しぶりに微笑んだ。今まで何だかんだやり込められて密かに溜まった不平不満がマシになった瞬間だった。

「……いつからいつまで」

「わかんない」

クソが。と口が動いたのが分かった。その後に、ガキが。が続いた。
近寄って来た男が人気のない隅を指さし、二人で向かうと男は膝をついて手と手を縛っていた布を解く、 恐る恐るした態度で腕を伸ばし、始めは両脇に手を入れ持ち上げようかしたが止め、 次に、腕の上に少女を座らせ掬い上げるように持ち上げるが、腕に位置が膝のほう過ぎてバランスが悪く、 もう一度、背に手を添えて位置を調節し、持ちあげて背筋を伸ばすと、何とか体制は整った。
近くで見る男の顔はしかめっ面だ。

「いいか、休憩することはいいが、今は完全には寝るな」

「何で?」

「布がほどけていると、衝撃で飛ばされた時、離れるかもしれない。
 せめて意識は繋ぎとめて置いて貰いたい」

「んー」

大丈夫かこいつ。
低く喉の奥で言いながら男が歩むのを再開する。多少揺れはするが、さっきまでと比べたら天と地ほど違うだろう。 勝ち取ってやったところも気分が良く、うつらうつらしながら少女が考え事をしていると、覗き込む視線を感じ、「起きてるよー」と返答をした。

「……“呪い”が起こるとして、
 災難が二種類あるのはわかったな?」

男は話し続ける事にしたらしい。
は間伸びした返事をよこして、肩に顎をのせてしまう。

「このまま、夜になってあのアパートに戻る場合と、どこか別の場所で凌ぐ場合があるが、
 どちらのほうが安全かわかるか?」

「わかるわけない」

だから、こうも苦労している。
災難は多種多様で予想がつかない。どちらかマシか分かったら、より危ないほうは近づかなければ幾らか心が休まるだろうに。

「そうだ。どちらのほうがより安全か、なんてわかるわけがない。
 だが、どちらであっても行った先で災難は起きる。逆説的だがな。
 
 ―――ここでひとつ、疑問がうまれる。
 選んだ方で災難に遭っている最中、選ばなかった方ではどうなっていると思う?」

「え? えーと……」

「答えは半々だろう。
 
 もともと起こる予定だった災難ならその場に居ようが居なかろうが起こるだろう。
 しかし、それが自らの行動で作り出す類の災難だった場合、そこでは何も起こらず日常が続く。

 これは、災難に遭う確率は変えられないが、災難が起こる場所は、いくらか変えられるという意味だ。
 災難の大小性質は様々だろうがな」

「だから、歩き回ってるんでしょう?」

頷くと、男は、今夜の寝床は、アパートに戻るのではなく、宿をとるべきではないかと言った。
そこで休憩し、静かに籠城しようと言うのだ。

聞いたは、まず、ためらいを衝動的に感じた。 その行動は、“自分んちを爆発させたくないから、見ず知らずのホテルに災難をおっかぶせにいく”、という、 身勝手な行為のように少女は感じてしまったからだ。でも、男が言いたい事もわかる。 自分達の行動が引き起こす災難はともかくとして、もともと起こるはずだった災難は、どうしようもない。 達にはどちらが結果マシなのか判断できない。あとは、右に行きたいか、左に行きたいか。 導火線の赤と黒、どちらを切るか。そして、どちらを切っても、結局は爆発するのがこの災難の仕組みだった。

男はなおもアパートに近づかない事を薦めた。

「辿り着いた場所で災難が起こる事は逃れられない事実だ。
 それなら、どこで起こすか、を考える。 

 自宅を失うヘマはしたくはないだろう? ガス栓にボロがきていた建物だ。
 くだらない行動一つで災難を引き起こすような真似をしては、つまらない。
 確実に帰れる屋根のある場所は、温存しておきたい。お前もそうだろう?

 ……これからホテルを探す。
 寝たいのなら、そこでしろ。部屋の中なら布もつけておける」

行った先で100パーセント災難が起こるのが分かっているのなら、達はせめて善良な人間として、マナー良く過ごす事を誓うべきだ。 火薬、科学燃料、時限爆弾等を持ち込まず、他の宿泊客と諍いを起こさずに、丁寧に静かに過ごせば、 まず、こちら側からホテルに被害を出す災難を作り出す迷惑はないはずだ。恐らく。

残されるのは、もともとの災難、ホテルが欠陥住宅であってその日の内に限界が来たとか、怨恨かなにかで放火されて火事になったりだとか、 夕食用に仕入れた魚に間違って猛毒のタコが混ざっていたとかは、達が来なくても起こりうる。行っても行かなくても同じ。 それなら、自宅のアパートを粉々にする危険を冒さずに、ホテルで毒タコを大人しく食うほうが良いだろう、と男は言っている。 もっと言うなら、入居率の少ないアパートよりも、ホテルの宿泊客に紛れるほうが目立たないというのも理由になるのかもしれない。
どちらの施設にも、オーナーにとっては、招かざる客では、あるだろうけれど。

「どうする」

「……私達が行かなくても起こる災難は起こるんだよね?」

「ああ、そうだろうとも。
 今だって、世界のどこかでは、不幸な人間が、人生に空いた落とし穴に落ちている。
 地球上で事故が起こらない日が1日でも……いや、1時間でも、ありうると思うか?」

「……」

考え、頷く。

でも、できれば……。

その二人の後ろ、隣の道路、走ってきたトラックの荷台のギッシリ詰まれた荷物のなかに、挟まれるように立て掛けられたスコップがあった。 強い風にあおられたのか、走行の振動で揺れたのか、スコップが倒れて車の脇に飛び出す。丁度歩道側だ。 トラックは、横スライド式のギロチンとなって、鉄の歯は頸部に直撃し、二人はなぎ倒された。数十メートル先で停車し、運転手が慌てて、折り重なるように倒れた二人に走り寄って来たのが見えた。

……そうだなぁ。


「防災の備えがしっかりしてるとこがいいなぁ」




**





「―――ええ、

 妻の実家の用事で来たのですが、泊まるはずだった実家の屋根が昨日の雹によって壊れましてね。
 屋根が無事だった部屋は義父や義母が使うとしても、我々は居場所がないのでこちらに。

 ―――うん?どうした?人見知りか?
 ああ、それから、妻は仕事があったので、遅れてくるのですが、今朝になっても音沙汰なくてですね。
 もし、こちらに連絡が回って来たような事があったら、部屋に繋いで欲しいのですが。
 はい、わかりました。よろしく頼みます」

言葉は流暢に吐かれ、表情は少し気弱に見えて、人好きする朗らかな表情をしていた。
赤毛のホテルマンは何の疑問も持たずに、父と不機嫌そうな顔をした娘の親子に部屋の鍵を渡した。


宿探しが始まって、挙げた条件は多種に渡った。
なるべく多くの人が利用するところ。けれど、何階もあるビルではなくて、いざ何かあった時、どの部屋の宿泊客が飛び降りても無事そうなところ。 古くなく、新し過ぎる事もなく、避難経路の電灯が明るくしっかりしてて、火災警報器やスプリンクラーが付いていて、 受付のホテルマンが良く言えば大らか、悪く言えば適当、でもいざというときはしっかり動けそうな健康な人物である事。 所持金とは応相談。普通、治安や部屋の内装、広さや、ベッドの数、禁煙喫煙、 食事、アメニティなどに気を使う部分を全てこれらに費やし、辿り着いたのは街の中心の外れにある、この大きくも小さくもないホテルだった。

部屋が空いてるかどうかホテルマンに尋ねる段になって、今更、言葉の問題に行き当たると、急に隣の男が人相を変えて喋りだしたのではギョッとした。 手はあれから繋ぎなおしたが、隣にいるのは誰だったか。手のすり替えでも起こったのかと思って見上げると、お面でも被っているかのような微笑みで見られ、何かを言われる。 その後、滞りなく鍵を受け取っていたので、男がこの国の言葉を理解して幾らか喋れもするのだと、はその時初めて知ったのだった。騙された。

荷物持ちも部屋への案内のサービスもなく、セルフサービスで部屋に赴き、男が鍵を開けると、人の良い表情は成りを潜め、 ギョロリと室内を見渡すと、何の変哲もない普通のホテルの一室のなかで危険を探した。 ベッドに寝っ転がったらバネの代りに鋭く長い針が肺に突き刺さりに飛び出してはこないか。ベッドの下には誰も居ないか。冷蔵庫の中にも誰も潜んでいないか。風呂場でガスは発生してないか。コードから漏電してないか。トイレは流れるか。窓枠は取れかかってはいないか。狙撃されるような同じ高さの建物が窓の外にはないか。 何の相談もしなかったのに、いつの間にか視線を向け、行動するところが男と被っている気がする。 そうして、なんの問題もなく人心地ついて、朝のようにベッドに並んで腰を下ろすと、は真正面を見たまま、神妙に口を開いた。

「あなた悪い人でしょ」

第一声、低くイタリア語で囁くと、元来の不機嫌さが目尻に戻ってきて、男は一瞥を少女に食らわしていく。

「何だって?」

「何で喋れるの黙ってたの」

「……今まで必要でもなかったからだ。 誓って、それだけだ。
 外国人だと見なされれば余計な事を訊かれる事も減るからな。ああいう場面では逆だが」

「あなた悪い人でしょう?」

顔を向けてみると、ハッと笑い飛ばして「喋れる事を黙っていたからか? それとも、言葉の通じない相手への態度を利用しているからか? お前も散々近寄って来た連中を適当な言葉で煙に巻いただろう」と男は肩を竦めてみせる。 しかし、次にが言った内容に軽薄な態度を改めた。

「それだけじゃない。
 ……貴方、家族や親戚とかと縁遠いでしょ? ひとりっ子みたいだし、結婚もしてない。
 他人から恨まれたり、恐れられたりするような事をやってきた。
 普通に正しく暮らしてきた人なら、何で自分がこんな目に遭うのか、
 悲しんだり、嘆いたりしそうだけど、貴方はさっさと状況を受け入れて、対策を考えているみたいに見える。

 詐欺師? 殺し屋? 下っ端のチンピラってことはないと思う。そんな感じじゃないもん。
 私を怒鳴って言う事きかせようとしないし、
 報酬をあげてどうにかしようとするのは、人を雇ったりする上の立場の人の判断っぽい。
 ほかの国の言葉が話せるのに、あの時、最初にイタリア語で独り言を呟いていたって事は、
 イタリアに主に住んでて長かった人。

 あなた、マフィアの人? しかも、幹部」

男の表情は変わらない。
ただ、じっとを見つめていた。

「……どうしてそうなる? それを知って何がしたいんだ?  
 知らなくてもいい事を知ってなんの得がある?」

「得にはならないかもしれないけど……」

男がマフィアでも、詐欺師でも、殺し屋でも、予想に反してチンピラや一般人でも、特別状況が変わるわけではないのはそうだ。 そういう人達がこの世界中にはどこにでも居て、朝、目覚めて、台所に行くと 「おはよう。君のお母さんに頼まれて朝食を届けにきた」と鍵を開けて入ってくるのも珍しくはない、と少女は思っている。 そして、彼等はや母親や知人に特別悪さはしなかった。 彼女自身スタンドを使って撃退するのは、病気で正気を失い牙を向いてきた野良犬や、 子供の内臓を外国に売ろうとする誘拐犯など、直接的に害を成そうとしてきた連中ばかりで、 だから、この男が世間的に悪い男なのだと判明しても、人の死に目を見るのは嫌だったし、今まで通り、死に続けるのから防いでやるのに戸惑いはない、と思っている。

でも、

「でも! 今まで名前も教えて貰ってないんだよ? 結局。
 名前くらい、最低限じゃないの? 普通に気になるよ。ホテルの名簿に書いたは偽名でしょ? 
 私の名前も私の名前じゃなかったみたいだったし。」

「……どうして家族関係について知れるというんだ?」

「子供の抱き上げ方を知らなかったみたいだったから」

時折居る。母親に気に入られようとを可愛がろうとするが、子供の扱いを知らず、手間取る人。そういう人は、絶対とは言えないが、どちらと言えば家族や人から離れて生きてきた人だ。

とたん男の奥歯が鳴るほど噛みしめられた。
発作のように、下瞼が痙攣して豹変し、いきなり威嚇のように睨まれる。
多分、はったりは当たったのだとは思った。思っていたよりも強い拒絶感に気圧された。
何故、そこまで自分のプロフィールが明るみに出るのを嫌がるのか。

男は、急激に膨らむ怒気と嫌悪を抑え込もうとでもしているのか、片手で顔を掴むように覆うと、肩で息をして自分を律しようと試みる。 繋いだままの硬い手からピリピリと感情が伝わってくるような気がして、は、駄目だったかなぁ、と、居心地悪く、男の感情が収まるのを待った。

男は自分の事が他人に知られるのを病的に嫌っている。

こうなってなお、手を離せない事情がなければ、どうなっていただろう。
この呪いが無かったら、子供を抱き上げる事なんて、この男は一生する気もなく、
抱き上げ方が分からなかった事が判明する日もこなかったのだろう。
そういう人生を歩んで行きたい、と、望んで、そうして来ただろう。

そこで、スッと心に疑問が過った。

には、世間的な悪人への嫌悪感は薄く、どこかぼんやりとした個人優先の倫理観でものを見て来た。
自分や母親達に攻撃してこなければ、そういう人生もあるんだ、と、子供特有の真っ白な価値観に丸と名前を書いて、 職業のカテゴリーに突っ込んで置くだけだった。

けれど、一体、

どういう経緯で、男は、死に続けるなんて呪いのようなスタンド能力を受けたのだろう。
今だに後回し後回しで、判明しないそこんところに、男の頑なさを受けて、は考えてしまった。
もし、その呪いに相応しい、子供の頭では想像もできないような恐ろしい行動を男がかつてしていたのだとしたら。

こうする事が本当に正しいのか、自分を納得させたはずの疑問が頭をもたげ始めていた。




**





その夜は、寝苦しい夜になった。

ガスの発生を予期して窓を薄く開けた。泥棒や強盗の侵入はあえて歓迎している。ナイフや銃ではの盾は通さない。 寝てる間にどんなに切り付けられても、ガスで窒息するよりも、安眠できる。 これまでにスイッチの入ったドライヤーが風呂のなかに落ちて感電したが、男に付けていたスタンドで咄嗟に男とバスタブ両方を掴んで事なきを得て、 ホテルのルームサービスを無心で食べた。 災難と災難の間隔を思い起こすと、あのルームサービスには致死性の何かが含まれていた可能性があるが、今のところホテルに救急車が呼ばれた形跡はない。 それは一皿限りで、ロシアンルーレットは見事に達だけに当たったのかもしれない。 守られているとはいえ、心理的には胃や腸がいつもよりもグルグルと呻いている気がした。 何が入っているかわからないものを食べているという、ストレスもあっただろうけど。

そして、二日目の夜がやってきた。
明日は三日目で、それを超えればいつのタイミングかに母親が帰ってくる。 顔の広い母親なので、何とか出来る手段があるかもしれない。 男は相変わらず、呪いをどうにかする術に悩んでいるらしいが、にとってはどちらかといえば母親の方に希望があった。

寝てしまえば、あとはもろとも。

目が覚めた瞬間に、刃物が目の前にあろうが、炎が燃え盛っていようが、なるようになれ。 そういう気分で、今日も、少女は、男の隣に疲れた体を横たえた。慣れたものだ。しかし、今日は、酷く眠いのはの方だった。少しも耐えられない。 足は歩きすぎて熱を持っているが、冷たい痛みがあって、布団を被っていると熱いような、出していると寒いようなだった。 暑さと寒さの煩わしさを超えると、とっぷりと意識は沈む。一気に海面から深海に潜っていくように意識が無くなるのは爽快感がある。
寝苦しさを潜り抜けて。 は深い眠りについた。

次に目が覚める場所は、ここに違いないと何にも疑わず、少女は、ベッドに体を預けていたのだ。










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余談


12才で抱っこは正直微妙なところだなって思ってる。事態が事態だけど。
毒タコはヒョウモンダコとかフグと同じ毒を持ってるのがいます(見た目ジョジョ感があるタコ)。
死因ネタがつきそうとかいうわけわかんない事になりそうなのがレクイエムボスの恐ろしい所……。