ルールは時とともに滅び、新しいルールは必然的に産まれるものだ。
ぽかん、と見上げたその手から、たった今、口に運ぼうと持ち上げられていたフォークが残念そうに皿の上へと戻された。
スクアーロは久しぶりに顔を出せた気に入っている店のなかで突っ立ったまま言った。
「何してんだ」
「貴方があんまり言うものだから、本場の味はどうなのかと思って……」
「早ぇ……」
「それは……私もそう思う」
一度目の再会は別れたその日の内の昼だった。
「で、どうだぁ?」
「美味しいよ。とっても」
悔しいけれどね、と立ったままの彼に彼女は向かいの席をすすめる。
「スクアーロ。よかったら一緒に食事をしない?」
スクアーロがカトラリーバスケットからフォークを取り出して自分の注文もなおざりに皿に手を伸ばし始めると、
食事を再開し始めたが言った。「そういえば、本の続きを読んだよ」
狼と山羊は、食べることも食べられることも殺すこともなく、新しい草原で幸せに暮らしたそうだ。
「この場合、いつか狼と山羊は一緒に食事ができるようになるのだろうか?」
「さあなぁ」
フォークの先にオニオンスライスとマグロの身を刺し、口に頬張った。
「知らねぇ゛」
雑食の人間にはまったく預かり知れないことである。