二人が奇跡のスマイルコラボレーションを起した頃、襲撃を受けるコントルノのボスは大いに焦っていた。
計画は途中まで順調だったのだ。弱く小さい自分のファミリーの要人一人の暗殺ならば、 きっとボンゴレは、たった1人の使者を送り込んでくるだろう、と“あの方”は言っていた。 その通り、ボンゴレの使者は一人のようだった。しかし、その使者が強すぎた。

これでは計画が台無しだ。コントルノのボスは考える。

自分はボンゴレを甘く見ていたのか。



―――いや、そんなはずはない!

油のような汗を拭いながら彼は否定した。
そうだ、十二分に警戒して、最高の態勢で臨んだじゃないか。包囲だって完璧だった。
地面に仕掛けた警報機に引っかかり、大勢の銃器に囲まれた、銀髪の男をみたとき、彼は歓声を上げたほどだったのだ。
……それなのに。


備え付けのカメラで見ていたボスは状況を良く知っていた。
青く光る画面の中で、その銀髪の男は、信じられないことをして見せたのだ。


あんなにも銃口を突きつけて、後ろにはガトリング砲まで突きつけてやったんだぞ。なのに、あの男は。

身震いが起こる。

あの男は地獄のような中心で笑ったのだ。
しかも、雨のような銃弾のなかから、かすり傷1つ無しのまま飛び出して、あそこにいた部下を皆殺しにしやがった。


あれがボンゴレ!


趣味の悪い大きな柄物のスーツが歪む、でっぷりと太ったコントルノのボスは、ファンファーレのように響き渡る声を聞いたような気がした。

しかし、しかしだ、男は醜くも、それをあがなうように身を丸めた。
まだだ。自分には天からさがる救いの糸がある。

男は目の前に広げた紙をいとおしげに撫でる。

この日のために大勢の人間を用意した。
道で拾ったマフィアにもなれないようなカスのような連中だが、自分や部下を守る壁にはなるだろう。
そして、なんとかあの男を倒したら、“あの方”が助けてくれる。壊滅的な被害を被るだろうコントルノを救い上げてくれる。


これさえあれば、一切合財すべては大丈夫だ。


まるで盲目な愛のように男はその紙を撫でる。

だから、気づかなかった。その天から下る糸の途中、その横に潜む、もう1人の女の死神を。





***



ファミリーを自分が潰す、と決めた彼に迷いはなかった。来るもの来るものを残らず、斬り捨てた。
しかし、多い。そこらのチンピラを一人残らず集めてきたようなバラバラな奴らだったが、人数が半端なく多い。

場所を動きやすい外へと移したスクアーロは舌打ちをした。体力はまだ大丈夫だが、血をすった服が重い。
剣もそろそろ拭いてやらないと油で鈍り始めている。
単独、多人数相手はコレだから嫌だ。

頼みの綱の剣に仕掛けた火薬も、もうとうに尽きた後だった。
あとは、剣の切れ味があとどれだけ持つか。

せめて、あと一人まともに戦えるやつがいれば。そう思って彼は、彼女の顔を思い浮かべた。そして心のなかで、首を横にふる。
任務の場所に着いてから彼女の姿は見当たらない。死んだか、逃げたか。彼は恐らく逃げたのだろうと思っていた。

彼がくるまで罠は作動していなかった。だとすると彼女は侵入すらする前に逃げ出したのかもしれない。 周り360°からの銃撃から身を守るため、ふいに見た天井のタイルのずれを広げて天井裏に上ったときにも、そこに彼女の姿はなかった。 まぁ、そんなことを事務員の彼女がしているはずもないだろうが。




と、そんな風に、彼は、あくまでも彼女は弱者説を譲らなかった。


ちなみに、なぜ彼には罠が作動して、彼女には罠が作動しなかったのか。それは彼女と彼の潜入方法のお国柄が関係している。
日本は日本文化の誇る、ジャパニーズ忍者屋根裏潜入という、潜入=屋根裏or縁の下という観念というものがあり、彼女もその口だった。 よって床の上の装置は発動しないともまぁ、これは偶然であり余談だ。

とにかく、彼女は弱いと思っているスクアーロは、逃げたのなら、それでいい。と彼女を許した。
そして、この任務が終わったら、彼女は死んでしまったということにして、
お咎めされないように取り計らうことを決めた。彼の最後の恩返しだ。

スクアーロは彼女のいない、これからまた始まる(お疲れ様のない)地獄を思うと脱力する思いだったが。
ホッとしてはいた。


そのまま、こんな世界のことなんざ忘れてしまえ。


彼の脳裏には、灰色のアームカバーをして、ほわほわと笑っている彼女がいた。




しかし、その笑みがいくら心に平和をつれてこようと、今は戦闘中である。
タイミング悪く、ちょうどそのとき、刃が鋭さを失った。
敵を切り裂いて進むはずが、敵を昏倒させたに過ぎず、次の瞬間、

彼はその敵に躓いた。

自分で思った。なにをやってるんだ。

「あ、」と彼にしては軽めの濁音のない、言葉が漏れた。それが異様に間抜けに聞える。
ズデッと自分が躓いたことが分かった彼は、一瞬、マフィア育成学校での同級だった跳ね馬を思い出して、
血の引く思いを味わった。


アイツと同類かよ!?


あくまでも、跳ね馬と同類ということに顔を青くした彼だったが、今は戦闘中である、もっとほかに顔を青くする要素はあるだろう。


もちろん、敵は待ったなんてしてくれない。
真っ黒い銃口が間の悪いスクアーロをとらえた。


***


真っ暗な屋根裏から、は降り立って、やっと、がらんどうになった建物内を見渡した。
彼女もこのマフィアを潰すと決意してから、行動ははやかった。本当のターゲットを割り出して、任務を完遂し、 外の混乱に乗じて逃げ出そうとしたものも消し、部屋に逃げ込んだものも一掃し、そして、敵対ボスも片付けた。 そこで彼女は思わぬ手土産を手に入れた。これで、建物内はクリアだ。

そして、彼女は外へと視線を向ける。一体、ここを引っ掻き回してくれたボンゴレとは誰なのか。
なんとなく予想をしながら、彼女は彼の元へとむかった。

しかし、彼女も、そのタイミングが悪かったのだ。


***


銃口から今にも鉛球が飛び出しそうな瞬間、
スクアーロは何発か食っても、<致命傷を避けるために、足に力を込めて立ち上がろうとした。

まさにその時だった。

「スクアーロ隊長!」

居るはずのない彼女の声がした。
反射的に足に回すはずだった力を喉にまわし、「来るな!」と叫ぶ。馬鹿だ。
つくづく馬鹿だ、と、彼は自覚する。今銃が向いているのは彼女じゃない。自分だというのに。




―!

―!

―!

―!

―!

―!



冷静さを失った人間は狂ったように、トリガーを引く。幸運だったのは、狂ったように、ではなく本当に恐怖で狂っていたのだろう、
撃たれた銃弾の数の割には命中率が悪い。しかし、やはり何発かは当たった。しかも大分まずいところに一発、当たっている。

スクアーロはどぼどぼと出血する己の腹を押さえる。ヤバイ。
銃弾は抜けているようだが、出血が心臓の鼓動のように脈を打っている。それは、大きな血管が破れた証拠だ。


「…やったッこれで昇進だ!俺達のファミリーはでかくなる!」


彼を撃った男は、足元に広がる血液を見て甲高い声で笑った。
それを聞きながら、腹に穴をあけた彼は、地面に伏せたまま、舌打ちをした。まだ、斬っていない敵は大勢残っているのだ。

銃を片手に狂ったように笑う男の狂気は、生き残っていたほかの仲間達にも伝染し、皆、一斉に笑い始める。


そんななかで、少し離れたところで立ち尽くしていた彼女は目を閉じた。



なにかがスッと頭から喉元へと落ちていく。熱くなったコメカミが冷めていき、
一瞬で煮立った感情が氷よりも冷たいものに代わっていく。
彼女は、興奮して自分を忘れている男達に冷静な声で忠告を開始した。




「それは無理な話です。」




***


彼女は思っていた。ほんとうにこの人は私のことをなんだと思っているのだろうか。
まるでなにも知らない小娘のように扱ってくれるものだ。

なぜか地面に伏せている隊長を見つけたと思ったら、なぜか彼は銃口を向けられている。

彼女は問うた。
貴方は誰だ。―――ヴァリアーの隊長のお一人だ。
ヴァリアーとはなんだ。―――どんなに大きなマフィアであろうと背筋を凍らせる暗殺集団だ。


そして、私も。


ヴァリアーの牙の一つのはずだ!




苛立ちのままに彼の名前を叫び、彼女は、彼女の相棒に手をかけた。
あの距離ならば彼女の“かまいたち”と言われた剣術で十分に届く。


まずは、隊長に放たれた銃弾を真っ二つにしてやろう。
やっと自分の実力を彼に見せることが出来ると、はちょっとした、高揚感を持ちながらその一歩を踏み出そうとした、


それなのに。



「来るな!」


彼女の従順な性は、彼女の足を止めてしまった。
そして、真っ二つになり損ねた銃弾は、彼を撃ち抜いて、地面へと埋まった。


彼女は一瞬、感情も思考も麻痺してしまった。
しかし、すぐに感情は起伏した。再び苛立ちに。


自分は止められたのに。防げたのに。なんでこの人は。


そして、彼を撃った男は狂笑をはじめ、あたりに狂った笑い声が満ちる。
足元の上司は蹲り、どくん、どくんと流れ出す血を手で押さえて顔を顰めている。


――――ああ、もう、


彼女は自分がキレ始めていることに気がついた。 導火線は眩い炎を灯した。


だから、


言ってやる。





けして、こいつらをわけのわからないまま、――――――










――――――その笑顔のまま、殺したりするものか。




***




「それは無理な話です。」


「…あ?」



笑っていた男達が、やっと彼女を捉えた。そして眉を顰める。
言うならば、なぜこんなところに事務員のような女がいるのか?という表情だった。
そして、そのあと、男達はニヤニヤと笑いだす。自分より弱者を嗤うソレだ。


彼女の導火線はあと2センチをきった。




「貴方達のボスはもう居ません。
 
 そして、なぜ貴方たちが我々の土地で麻薬の売買を行ったか、その理由も証拠も押収してあります。


 計画は、貴方達は、


 
 破滅です。」



彼女は懐から用紙を一枚出してみせた。それは、先ほどまでコントルノのボスが愛でていたその紙だ。


「コントルノは何時の間にやら、巨大マフィア、ピアットファミリーの傘下に入っていた。非公開を求むこの契約内容で。」





つまり、茶番のシナリオはこうだった。


弱小マフィア、コントルノがボンゴレの土地で薬の売買をしたという噂と、確証が得るがどうかのギリギリの証拠をみせ、 ボンゴレの暗殺者が自分のところに来るようにしむけた。そして、準備万端の状態で待ち構え、その暗殺者を捕らえ、 その死体を証拠に、自分の土地で何をしてくるのだ!と高らかに被害者面を決め込むつもりだったのだ。

当然ボンゴレは、薬の売買のことを言うだろう。しかし、この弱小マフィアは薬を隠し、 知らぬ存ぜぬで白を切り、ボンゴレを一方的な加害者に仕向ける。事情説明を求む要求を散々無視していたのもこれのためだろう。 最終的には、ボンゴレの土地か、資産の一部を分捕るつもりの作戦だったのだ。 しかし、それをするには弱小マフィア、コントルノでは役不足に近い。よって、でてくるのが、この契約。ピアットの傘下という名分。



「巨大マフィア、ピアットファミリーの傘下。それなら面子も立ちますし、
 ピアットと戦争をするくらいなら、おとなしく土地を渡すだろう、という考えだったのでしょう。」

それに、と彼女は続ける。

「ピアットのほうから見れば、もし失敗しても、こんな弱小マフィアがつぶれたところで、どうともしない。
 だからか、随分と杜撰な計画ですが……―――トカゲと尻尾みたいな。使い捨ての、いい関係じゃないですか。」


恐らく、この話を持ち出したのはピアットのほうではないだろうか?だとしたら大変だ。彼女は言う。


「これから私たちは大忙しです。」


彼女は、笑ってみせる。
そう、ずいぶんと舐められたものだ。ボンゴレはそんなものではない。


「貴方達は誤解している。

 ボンゴレは穏健派といわれようともマフィアであることに変わりはありません。
 裏切られ、奪われ、貶されるというのなら、 容赦はしない。」




男達は汗をかきながらも、やっぱり笑った。彼女はその顔が気に入らない。

そう、彼らは思っているのだ。ここにいるのは、みずからボンゴレの使者と名乗った、弱そうな女と死にぞこないの男が一人。
殺してしまえばこっちのものなのだ。死体が二人になっただけ。
ボスは死んでしまったらしいが、そんなことはどうでもいい。
いや、もしかしたら次期ボスは自分かもしれないぞ。

そんな暗い傲慢と野望に満ち満ちた顔だ。

男達は次々に銃を彼女に構えた。彼女はその契約書を大事にしまい、キリキリと張り詰める空気を吸う。
導火線はあと1センチを切っていた。


***


そんな彼女を見ながら腹に穴を開けた彼は、朦朧としはじめた意識を掻き集め、彼女の有能さに舌を巻く。
自分が思っていたよりずっと彼女は使えたらしい。
さすがはヴァリアーに属するだけある、と彼はとんと忘れていたそれを思い出していた。

けれど、状況が悪い。
彼は彼女の制服の裾を引っ張り言う。


「逃げろぉ」

「え?」

彼は思う。それだけ分かれば十分だ。あとは、その情報をボンゴレの本部に伝えることだけ考えればいい。
思っていたよりも有能らしい彼女ならば、それができるかもしれない。

ここまで来ても、彼の勘違いはまだ氷解しきっていなかった。
何もできなかった事務員の彼女は、ここにきて潜入ができる事務員の彼女にランクアップはしたものの、
未だに、彼の庇護を脱しきれていないのだ。

当然、このままこの証拠を持ち帰り、コントルノとピアットを相手取ることには、順番が入れ替わるだけで、
代わりないだろう。けれど、それでは腹の虫が収まらないのが、実は結構な戦力を有する彼女の、 の、本音だった。


「なに、言ってるんですか…?」

「わかんだろぉが、ここで二人無駄死になんてしてみろ、奴らの思う壺だ。だったら、一人でも生き延びて本部に伝えろぉ」

「……。」


自分が囮になれば。




彼はそう言った。

彼女の目が揺れる。

彼には、自分を置いていくのを戸惑っているように見えた。





けれど、もちろん彼女にとっては違う。

それは、明確であり、単純な、


怒りだ。





「俺が時間を稼ぐ」

そう言ってふらふらと立ち上がる彼を彼女はジッとみた。

「だからお前は、」





逃げろ、の“に”の形に彼の唇が変わった瞬間―――――――――



――――――――彼女の、順当に燻され、指の先ほどになっていた導火線は燃え尽きた。












ゴッ



***




「えっ」



彼女はなんとか、立ち上がった彼の後頭部に思いっきり、刀の鞘でぶん殴った。
鈍い音にあと、まるでコントのようにスクアーロの体は崩れ落ちる。
憮然な顔のまま彼女は言う。


「……どの口で言ってるんですか。」


周りを取り囲んでいたごろつき達はは、死にそうな男を戸惑いもなくぶん殴り、昏倒させた女に、一同「え?」っと、ざわめきたった。
しかもこの女、部屋の掃除を終えたあとのように妙にすっきりした顔でいる。

「……。」

男達は無意識のまま後ろに下った。
その土をするザッという音に彼女は振り返り―――――――――



まったく、もって、この地獄の園では、仏の顔すら悪魔の所業に違いないのだった。



***








――――以上、今後の報告を終わりにします。

完璧な動作で腰を折る彼女をザンザスは見たあと、口を開いた。





「これから楽しくなりそうじゃねぇか。」

「そうですね。」

コントルノの件から、3日後、ピアットファミリーは風前の灯だ。
いくら巨大マフィアといえども、ボンゴレに粗相があったといえば、ボンゴレお抱えの暗殺集団が黙っちゃいない。

ザンザスは珍しくご機嫌に、ウイスキーを仰いだ。

最近デスクワークばかりだった彼も、きっと今回の山には参加する気満々でご機嫌なのだろう。
それはも同じだ。今回の参加を止めてきそうな彼女の上司は今や、容態は安定したといえど病院で絶対安静であり、
そして、ついでに、直接の上司である胃潰瘍持ちの彼も胃潰瘍の悪化で入院中である。

今回彼女を使うのはまったく違う人だ。それがとても彼女には楽しみで。このことを思うと自然に口元が緩む。
それを指摘されると。彼女は困ったように笑って、「仕方がないじゃないですか。」と言った。


ザンザスはそんな彼女を鼻で笑ってみせ、「使えなかったら承知しねぇ」と不遜に言った。

今回、彼女を使うのは何を隠そう、ヴァリアーの頂点、ザンザスだ。
上司が不在ということもあるが、彼女は今特別な立場になっている。
戦争とも言える大きな山を持ち帰った彼女は、“ある特別処置”に加え、腕を買われ、 今回の山が終わるまでの一時的ではあるが昇進し、幹部と同等の立場となっていた。 一時的故、部下は居ない。加えて幹部と同等となった彼女に命令を下せるのはザンザスだけ。
よって、戦いでは彼女はザンザスの傍でその刃を振るうことになる。

彼女は、それが、とても嬉しい。

理由はいろいろとあるが、
先ず、“使えなかったら”と言ってくるのだから、最初は“使える”と思って、いてくれているのだろう、というところだ。
その言葉は、今まで散々鬱屈していた、彼女の心の琴線を、これでもか、というほど揺らすのだ。

彼女は言う。





「尽力させてもらいます。」



***


数日後、巨大マフィアのピアットファミリーが壊滅したという話が巷を騒がせた。 その噂を確かめにピアットファミリーの根城に訪れた者は、その酷い有様に背筋を震わせそうだ。 特に、ピアットのボスが居ただろうその部屋は、業火と竜巻が同時におこったような有様で、 主のいないその部屋は、天井が抜け、イタリアの青く綺麗な晴天を覗かせていたという。








こうして、彼女と彼の一番初めの邂逅は終わった。
これが彼が、彼女の実力を知る最大のチャンスであり、何回目かの失敗であった。
そう、最後に明記しておこう。






彼もとい、病院にがんじがらめになっている男もとい、報われない男もとい、スクアーロは、
今だ、彼女の実力とその背景を一人知らないままでいる。










彼の事情1END







おまけ(病院内にて)

彼女の上司、胃潰瘍持ちの彼は、スクアーロからの連絡の後、吐血し、ボンゴレ付属の病院へと入院を余儀なくされた。
暗殺者がストレスで入院とは、と事情を知らない者は彼を嘲笑ったが、その次の日運び込まれた彼の上司をみて、その意見をかえた。
腹に穴を開けて入院してきた彼の銀髪の上司は、重症だというのに、彼を見つけると、血を撒き散らす傷の存在を感じさせないほどの 素晴らしい蹴りを彼に浴びせたのだ。しかも、当たった場所は彼の鳩尾。胃の真上。彼はその場に蹲り咽び泣いた。
彼を馬鹿にしていたほかの入院患者はあまりのあつかいを受けた彼を助けようと、彼に近寄った。
だが、それを見た銀髪の男が雄たけびのような、そうでないような声を上げ、「そんな傷でのんきに入院してんじゃねぇ!」
と近寄ってきたもの達に理不尽な暴力を加えた。暴力を受けた者は意識を飛ばしながら思った。

ヴァリアー怖ぇよ、ヴァリアー…

某上司の胃潰瘍はまだまだ治りそうもないのであった。