ここはまぁ埋め立て場。だからありとあらゆるゴミが集まってくる。
それは人もしかりというのだからびっくりだ。びっくりどころか、犯罪だ。
しかし、この突っ込みはキリがないのでスルーとする。

捨てられるゴミは種類によって区間が分かれていて、
食べ物が捨てられてる区間にはここから歩いて30分くらい。
といっても彼らが歩いて30分なのだから、私が休まず全力疾走して30分といったところだろう。
そう思っていたら甘かった。もう、あれだ、筋肉番付のアトラクションを永遠と繰り返している感じ。

山あり、谷あり、トラップあり。足がつけば溶ける沼なんかあった。死ぬ。
はっきりいって死ぬ。永遠にたどり着かない。何が30分だ。
なんとか皆の力を借りながら、たどり着くも、そのあとは食べものをかけての大人との命がけの死闘だ。
そして帰りもヘロヘロなままSASUKEに挑戦。無謀にもほどがある。
はっきり言ってついていかなきゃ良かった。例え居残り組みに拷問好きの危険人物が居たとしても。

けど、やっとこさかえって来て疲れて寝そべっていったら結局踏まれた。
いや、意図的かわかんないけど、ニヤッて笑ってたし、グェって呻いたらそれはそれは嬉しそうに…いや、止めよう。

ともかく、持ち帰った食べ物はギリギリ人数分といったところか。
パンやらお弁当の残りやら、まぁ、ゴミなのだから食べかけだったり、少し賞味期限を知りたいような色合いのものもある。
けど、贅沢は言ってられない。が、さすがに子供にこのままをこれを食べさせるような勇気は、
ほとほと平和な日本の一般的な家庭で育った私にできるはずもなく、さっそく青いパンに齧り付こうしたウボォーを止めた。
もちろん鼓膜がはちきれんばかりに文句を言われたが、もっと美味しくするんだ、と言ったら少しは文句が軽減した。

だって、ねぇ、これ青いパンじゃないんでしょう?青かびなんでしょう?


***


評判は上々だった。
カビのついてしまったパンはカビのついた表面を削り取り、カチカチになってしまったパンと一緒に、
奇跡的にゲットした卵と牛乳につけて、フライパンで焼く。あと、腐り掛かった林檎やほかの果実は腐った部分を綺麗に取り除いて、
喫茶店のありそうなスティックシュガーが大量に捨てられてたのでそれと一緒に煮込んで手作りのジャムにして付け合せ。
お弁当の残りのマッシュポテトも一緒に入ってたウィンナーをみじん切りにして合わせて、
残っていたパンを粉々にして作ったパン粉をつけてカラッとあげて、コロッケ。
あと、こまごまと拾ってきたくず野菜は全部まるっと鍋に入れて野菜スープにした。

見た目朝食のようだったけど、まぁいいか。これでなんとか食欲の出る食事になった。
ふぅ、と一仕事終わった感に浸っていたら、唾をすすっていた皆が空腹を訴えた。
私は得意げに笑って片手をショーマンのようにうやうやしく差し向けながら、
はは、食うがいいさ!そして敬いたまえ!この、私を!と演説する。それが終わるまえに大体の者は口をつけ、
うまい!とか、おいしい!とか、おかわり!とか言っている。まぁ、いいんだけどね。

姉?」

そんな餓鬼達のなかで、口をつけていないのは、私を抜かし二人だけ。私の隣で私を待っていた可愛いシャルと、
部屋の真ん中の本の塔でいつものように本を読んでいるクロロ。
シャルははやく食べよう?とこれまた可愛く小首を傾げる。うん、ホントに。
しかし、どうにも、気が進まない。私はクロロが何かを食べているところを見たことがないのだ。
いつも、ふらっと出てきたあと、「外で食べてきた」という。そして、自分の分になるはずだった分け前を皆に山分けか
、幼くて体の弱いシャルにあげてしまうのだ。私はそれをいつも疑っている。勘だけど。もしかしたら。

フォークを両手に持って首を傾げているシャルに先に食べるように言って、私はクロロの分に分けた皿を持って本の塔に登った。
(途中スープを零すかと思った。零したらクロロに食べてもらう前に私はクロロに殺される。それは簡便)

「なんだ?」

いや、ご飯の時間。

「さっき食べてきた。」

さっきが何時なのかと、何処で何を?って訊きたいところだけど。
多分、訊いても適当に嘘を言うだろうし。私にはその嘘を見破ることはできないし、何も言えなくなっちゃうし、
うん、ここはやんわりと。

「いやね、これ、私が作ってみたんだけど、味見してほしいな、と思ってね。」

わざわざ丹精込めて手を加えたのもこうゆうふうな理由付けができるからだったり。私って策士だ!今考えたとかじゃないよ!

「……」

ジッと料理を凝視したあと、塔の下でウメェ!とコンクリを砕いて体で喜びを示す巨体を見て、

「おいしいんじゃないのか?」
「………あ、いや、クロロの好みに合うかは、わかんないよ!うん!」
「まずいと、言われたいのか?」

「…なんで?」

グルメなの?
とりあえず、食わせることには成功した。残さず食べるとこまで観察したが、やっぱり私の勘は正しいような気がする。
クロロはきっと外でなんて食事を摂ってない。まぁ、理由はわからないでもないけど。これは問題だ。
片付いた食器を持って下山しながら私はこの問題解決に意気込んだ。


皆で生き残るために!


しかし、私が今解決すべき問題は別にあった。…みごとに片付けられた私のディナー。

「誰?」
「ウボォーだよ!」

シャルが半泣きで教えてくれた。

「俺、止めたんだよ!?なのに…」
「ありがとうねーシャル」

シャルは可愛いなぁーあそこでコンクリ砕いてる奴は憎たらしいなぁー(SASUKEを往復+絶食2日目)憎しみで涙が出てきたよー
その後、みんなにパンの耳とコロッケの衣と、キャベツの堅いとこを恵んでもらって、私は、不貞寝した。





目が覚めてみたらゴミ山だったその後