「ああ、失敗したか。」


妙に冷静に思ったけれど、実際は必死にその腕をつかんでもがいていたりする。

境界線を見誤った。

黄色と黒でなく、透明と保護色でできた立ち入り禁止のテープから、一歩踏み出して、茨の元へとペタンと尻餅をついてしまったようで。 なんともわかりにくいそれに嘆いてみたりもするんだが、そもそも、そんなテープの貼られた場所でうろうろとしていたのは、 そのわかりにくさゆえのスリルを求めてだからだったりするので、所謂自業自得。身から出た錆。

酸素が足りないくせに頑張ってしまっている我が脳みそが、走馬灯の代わりに、 恐らく暇をもてあましてみていたテレビの内容を見せて、私に反省を促してくる。 ここ近年、現実とゲームの世界の見分けがつかなくなっている若者が増えている。 といっても、これは大分前に見たテレビの内容なので、現実と非現実の区別がつかない元若者が今どうなったかは知らない。 もしかしたら、ゲームの世界に移住を決行する若者が増えて、人口が減っているんじゃないか?とか考えてみると、 脳みそが、「出生率の低下」を議題にしそうになった。んなこと言われても。そこはお得意の強制シャットダウン。 ウゥと唸る音が急に命を絶たれたように、プツン、真っ黒。

再起動。

それてしまった話題を引き寄せてる。 現実とゲームの境が分からなくなってしまった若者は、命を軽んじて、簡単に人を殺す、傷つける。だって。 なんで、ゲーム?と首を傾げて、非現実の代表格がなんたるか、を説こうとすると、脳みそが慌てて述べた。

それは、セーブしてあるからやり直しがきく。と思っているから。だそうだ。

私は思う。
セーブしてあるって信じて人を殺す若者と。
セーブしてあるって信じて人を殺す若者が居るって信じてる大人。
どっちが現実じみてるかって、


大人。


で、私の首を絞めているのは、大人なわけで。これは現実なわけで。

ああ、失敗したか。踏み込みすぎた。じゃあ、私は現実にないセーブデータを信じてゴリ押ししてしまった子供だったのだろうか。 とも思ったけれど、なんかしっくりこない。 黒に白の文字でBADENDなんぞ見てもなんも面白くないので、もがくもがくもがくも、それは大人と名乗るだけの力が篭ってる。 だんだん、意識が遠のいてきた。死ぬのかなぁ。

そうして脳みそが私に教えてくれる。

子供の首を絞めながら、泣いて怒って、寂しそうなのは果たして大人であっただろうか。

もしかしたら、セーブデータを信じていたのは目の前の人なんじゃないかなぁ。 だったら大人じゃない。大人じゃないなら、成長するだけの余裕はあるでしょ。涙を拭くのも、笑うのも時間の余裕がある証拠。 セーブデータなんか、それは、確かに戻れるだろうけど、所詮画面のなかの映像でしかないのさ。触れられないのさ。過去なのさ。

それ以前にフィクションであるというのに目を背けるくらいには私も子供なので。

だから、今力いっぱい蹴り上げて、二人で現実に戻りましょうか。



プツン。








走馬灯強制終了