不道徳。悪魔。化物。
不道徳。
自分が一番もっている人間像である人物は、俺を指差し、頭蓋骨という壁に囲まれた脳みそを必死に稼動させながら、
目を真ん丸く、いや、鋭く?させながら叫んでいる。けれど、その言葉は俺には届かない。
だって、あくまで君は観察対象であって、最初から平等ではないんだから。
けど、君は違う。
俺は可笑しくて可笑しくて、呪いの言葉を吐き捨てる君に笑ってみせる。
君は俺のことをまだ同じ人間だと思ってる。いやぁ、君は本当に優しい!素晴らしい!
だからさぁ、きっと俺の言葉は届くわけで。
悪魔。
呆然とした、その瞳を舐めるように、悪意を吐きかければ、魂でも抜けてしまったかのようだ。
俺がそいつを殺したんじゃない。俺はただ一言、「そうかもね。」って言ってやったにすぎないんだよ。
あとは、そいつが勝手に近所のホームセンターに向かって、頑丈なロープを買って、
その足で少子化で閑散とした公園に向かったわけで。
無責任?
君はまったく人間を分かっていないね。人間は一生のうちで一体何文字の言葉をその細菌のはびこる口から吐き出すと思ってる?
その言葉の全てに責任をとったとしたら、人間の肉体は四散するよ。あっちにこっちにひっぱられてぐっちゃぐちゃ。
あるいはそうであったら、奴は、生きられたのかもしれないねぇ。死ぬ為にさ。
本末転倒だね。けど保険の類を考えたら病か殺人が一番だろ?
ともかく、俺は一生のうちの膨大な言葉のうち、たった「 そ う か も ね 」って音を聞かせただけだ。
それになんの責任があって、どんな罰を受けろっていうの?
あとさ、人っていうのはよく他人に意見を求めるけど、相談に喫茶店を選んで、相手に「相談がある」って呼び出した時点で、
だいたい、自分のやりたいことっていうのは、もう決めちゃってる後なんだよ。
だけど、処理が終わらないから他人の頭を借りる。自分勝手だよね。他人の時間を奪っておいて。
だから、俺に責任を求めるのは可笑しくない?むしろ、この情報の詰まった頭をレンタルしてやったわけだし。
まぁ、同意してやることしかしなかったけど、ね。
化物。
で、君はこんな俺を見て、俺は人でなしだ。と認識するわけだけど、まったく酷いよね。
歴史を紐解けば、残酷なことなんて、ありふれてるっていうのに。
人は残酷っていう本能の赤錆びた釘とか尖ったものを理性っていう甘い大福の皮みたいのでくるんでいるのが本質だ。
だってたった今、まだ俺のことを人間だと対応していた君は、俺の後押しを持って俺を人外だと決め付けて、自分を正当化して、
俺を殺す許しを求めてる。残酷で残忍だと思うだろ?君は君の頭のなかで俺を今何回殺した?
そういうものなんだよ、君が好きだったアイツもね。
俺と君は同じ人間で、君は観察対象。俺は観察者。
人間ってまったくすばらしいよ!
同じなのに分離され、区別され、名づけられる、同じ人間に。そして、人間は平等を叫んでやがる!
平等であるべきだと思うなら、まず、名づけることをやめるべきなのにね!
そして、
人間は、ままならなくなると、泣く。
処理できなくなったストレスを涙に流すって聞くけど、本当かな?
だったらもっと確実に無くなる方法があればいいのにね。手術とかで切り出すとか。
けど、人間、成長にはストレスが必要だよねぇ、んー…、あ、だからストレスに負けた人間は死ぬのか。アイツみたいに。
ほら、進化しないと。観察者を暇させないように。
道徳も、悪魔も、化物も、みーんな、人間が作ったんだよ!すごいだろ?
だからそれらは皆、人間の頭の中にいるのさ!