1.南の犬の唄
2.否子(いらず)
3.天戸(あまと)
4.ヒルコ
5.パーソナルスペース
6.殉教者
7.犬神憑き
8. 計画書
9. 生命倫理学の本
10. インプリンティング
11.プロメテウスと火
12.パンドラの箱
13.ヨハネ黙示録
14.聖婚の儀
15.人間を愛した兄弟と残った希望
16.エルピス
17.ペルソナ
18.死の受容のプロセス
19.等活地獄
20.鬼遊び
21.尊厳死
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南の犬の唄
南の犬が首を括って死んだ。
主人に「死ね」と言われて、待てを知らない犬は、それはそれは潔く。
貰った首輪を首に巻きつけ、ただ一息漏らして、
あとはまっすぐに―――。
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否子(イラズ)
意味は「要らぬ子」。親が望まないのに産まれてきてしまった子供のことであり、忌みを込めてその子供を呼ぶ。
あらゆる意味のなかで、特に、神代の家で生まれる、次の実を産むための姉、神の花嫁となる妹のほかに、稀に、産まれてしまった子を指す。
否子には居ない子という意味も持ち、ひたすら回りから無視をされる扱いを受ける。
その子供は、目印として、黒衣を被り、経帷子を模した白の着物に赤の帯を締め、足首に鈴を付け、
名前は、古事記の「ヒルコ」にあやかった名前を名づけることが多い。
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天戸(アマト)
不完全な不死である神代の家のものが年老いて、ある年齢に達したら、村の者が不審に思わぬように篭る地下洞窟。
神代家と教会の地下に存在しているが、その存在は神代家と一部の人間しか知らない。
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ヒルコ
不要の子供である否子につける名前として、良く使われるもの。
ヒルコとは、古事記に出てくる奇形の子供の名前“蛭子”のことである。
イザナギとイザナミは一番初めに産まれた蛭子が不具の子だったため、葦舟に入れ海に流し、捨ててしまう。
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パーソナルスペース
他人に近付かれると不快に感じる空間のことであり、
その空間の距離は個人差はあるものの親密さによって変化する。
[個人的関係の場合]
120cm〜45cm----友人などと個人的な会話をするときなどの距離
・両方が手を伸ばせば指先が触れあうことができる距離。
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殉教者
自らの信仰の為に命を捨てた者を指す。
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犬神憑き
犬神、四国などに伝わる俗信。
犬神がのりうつったという異常な精神状態、また、その人を指す。
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計画書
昼子が制作した2003年8月3日〜の未来を描いた計画書の一部。所々、泥で汚れている。
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生命倫理学の本
書庫に忘れ去られている古い本。
そのうちの【医療の倫理ジレンマ】の項目に、走り書きがある。
[医療の倫理ジレンマ]
例えば末期癌が発見された高齢者にその結果を告知するべきかどうかという問題に対して、
拠り所になる倫理原則によって、導き出される結論が、「告知し、死に備えるべき」という結論と、
「患者にショックを与えないために告知しない」という、まったく逆のものになってしまうというジレンマ。
神に祈ることで救われるというのなら、
祈りを放棄し、麻酔を受け、医者の治療を受けることは、神を疑ったことになり、
それは罪となりうるのか
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インプリンティング
刷り込み、刻印付け、とも言われる。鳥類および哺乳類の一部にみられる、
生涯の特定時期に短時間で行われ、その後長い間継続するといった特殊な形の学習のこと。
鳥が卵から孵った時目にした動き声を出すものを親だと認識し、それを雛は追いかけるといった習性など。
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プロメテウスと火
ギリシア神話。プロメテウスは天界から火を盗み、人間に与えた罪でカウカソス山の山頂に張り付けになり、
生きながらにして永久に毎日肝臓をハゲタカについばまれる罰を受ける。
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パンドラの箱
ギリシア神話。プロメテウスが天界から火を盗んで人類に与えたことに怒ったゼウスが、
人類に災いをもたらすために「女性」というものを作るように神々に命令した。
様々な神からの贈り物によって“パンドラ”という女性が作られ、
彼女に“開けてはならない箱”を持たせ、プロメテウスの弟のエピメテウスの元へと神々は彼女を送り込む。
ある日、パンドラは好奇心に負けて、その“開けてはならない箱”を開いてしまう。
すると、様々な災いの子供達が箱から飛び出て、世界へと広がってしまった。
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ヨハネ黙示録
キリスト教。新約聖書の最後の書。世界の終末を綴ったものとされている。
地上を災いが襲い、救世主イエスが再臨し、神を信じ正しい行いをした人々を天国に導き、
命の書に名前のない人間を地獄に落とす。
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聖婚の儀
神代家の姉妹の内、神の花嫁である妹に初経が訪れた後に行われる儀式。
姉は神代の血を絶やさぬように外の家から迎え入れた男子と。
妹は神のもとへと向かう。
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人間を愛した兄弟と残った希望
ギリシア神話。
ゼウスが天界と地上をおさめるようになり、
ゼウスに味方したプロメテウスとエピメテウスの兄弟は地上の生物を作ることになった。
様々な生き物が作られ、空を飛ぶ翼や、鋭い爪、速く走れる足など、
素晴らしい能力を弟のエピメテウスはその生き物達に授けた。
最後に、自らの姿を模した生き物を兄弟は作ったが、与えられる能力がなくなってしまった後だった。
しかし“何も持たない彼ら”を愛した兄のプロメテウスは、天界の火を“人間”に与えることにした。
(中略)
プロメテウスがカウカソスの山頂に張り付けになる罰が決まったあと、彼は弟を案じて言った。
「ゼウスからの贈り物は貰うな」。天界から火を盗み、人間に与えたプロメテウスだけでなく、
弟のエピメテウスや人間自身にも罰を下すためにゼウスは動き出していた。
(中略)
かくして、神に創られた人間の女パンドラは、神に与えられた好奇心によって、
災いは箱から世界に広がり、人間を害し始める。
しかし、箱の中に残ったエルピスによって、人間は希望がついえることはなく、
箱を開けてしまったパンドラをエピメテウスは許し、愛し続けた。
二人の間にできた娘と、プロメテウスの息子は結婚し、後に起こる大洪水を二人で生き抜いて
今の人間の最初の二人となった。
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エルピス
ギリシア神話。
パンドラが箱を開けてしまったがために災いの子供が飛び出し、
それを見て慌てたパンドラが箱を閉じ、それによって箱の中に残ったものがエルピスとされる。
エルピスとはギリシャ語で「予兆」「期待」「希望」と訳され、
予兆が箱の中に残ったために人間は未来を知ることはできず、
希望を失わずに絶望しないで生きていける希望という説や、
それこそがゼウスが望み、未来が絶望だと知らずに生き続ける人間に課した罰だという説もある。
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ペルソナ
ラテン語。古典劇にて役者が用いた仮面、もしくはユングが唱えた心理学用語の人間の外的側面のこと。
個人の感情や欲望を押し殺し、周囲の望む役割を演じるために形成された社会的人格である。
人が外界で接するにあたり必要なものであり、社会に属する限り無くてはならないものである。
母なら母親としての、父なら父親としての、子なら子供としての設けられた役割があり、
同時に、家族へ接するときの自分、学校にいるときの自分、会社にいるときの自分、
職業に置いても、例えばスーツを着る、制服を着る、言動に気をつけるなど、
自分の役割のそうあるべき仮面を人間は複数持っている。
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死の受容のプロセス
エリザベス・キューブラー=ロスが提唱した、人が死を受容するまでの経過を5段階に分類したもの。
第一段階:否認
第二段階:怒り
第三段階:取引
第四段階:抑鬱
第五段階:受容
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等活地獄
仏教。殺生罪を犯した者が堕ちると言われ、五体を裂かれて粉砕されるが、
獄卒の「活きよ活きよ」の言葉で等しく生き返り、責め苦が繰り返される。
ゆえに等活地獄という。
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鬼遊び
「鬼ごっこ」のこと。古くからおこなわれてきた子供の遊戯の一つ。
鬼になった者が他の者を追いまわし、捕まったものが次の鬼となる。鬼渡し、鬼事。
追難の儀式が遊戯として伝承したものとされている。
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尊厳死
人間が人間としての尊厳を保って死に臨むこと。
近代医学の延命技術などが死に臨む人の人間性を
無視しがちであることへの反省として認識されるようになった。
しかし、生存権を脅かしかねない、殺人や自殺幇助であるとして、警戒する意見もあり、
尊厳死は、現代において答えの出ない問題を抱えている。